バンコクでの健康診断の思い出は、決して今後も忘れることはないだろう。とにかく私自身の人生の中でも、初体験のことばかりだったことは今でも鮮明に脳裏に焼きついている。きっかけとなったのは、勤め先が推し進めている海外戦略チームの一員として抜擢されたことだ。グローバル社会の波が押し寄せている昨今、とりわけ東南アジアの新興国でアドバンテージをとることは重要視される傾向にある。
私自身、営業成績は常にトップクラスを維持していたため、成長著しいタイでの活躍を期待されることになった。なにしろ若い頃から健康には自信があった。そんな私が現地でまずお世話になったのがバンコクの診療機関で受けることになった健康診断である。日本の病院やクリニック、診療所と比較した場合、その診療機器の充実度合いは格段に物足りないものであった。
やはり、先進国日本と比べてしまうのはいささか酷なことかもしれなかった。しかしながら、驚いたのは、医師の親切丁寧な診察であった。日本の診療機関とは一線を画していた。私自身も母親の付き添いで大学病院を訪れたことはあるが、朝から昼過ぎまで待たされるのが当たり前のようになっていた。
そんなこともあり、バンコクでの健康診断にはあまり期待をしていなかったが、蓋をあけてみればとても満足の行く内容のものだったといえるだろう。結果の方はいたって健康であった。診療機関からのお墨付きを得た私は、思い切り仕事に打ち込むことができた。